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地方銀行と証券会社で働く筆者のお金にまつわることを発信するブログです。

外貨建て保険「やさしさ、つなぐ」

三井住友海上プライマリー生命が提供する外貨建て保険の中で、増やすことを主な目的とせず、渡すことを目的とした外貨建て保険、それがやさしさ、つなぐです。

 

暦年贈与の毎年の控除額である110万円を活用するための保険で、一括で保険料を払い込み、一年ごとに指定した人に保険金を渡していく仕組みで、その間は外貨建てにして金利で増やしながら渡しましょうというコンセプト。

 

メリットとしては、贈与契約書を作成する必要性がないことです。法的には、暦年贈与を行う時には贈与をされる側とする側の双方の意思を確認した記録を残しておかなければいけません。これは司法書士などに作成を依頼すると数万円はかかるものなので、この作成を変わって保険会社が代行してくれるのがいちばんのメリットです。

 

また、外貨運用のため為替が大きく円安傾向に進んでいる場合は円換算で110万円を超えてしまう可能性がありますが、超過分に関しては自分のところに戻す設定ができるので控除額を超えて渡してしまう心配がないとこともメリットです。

 

高齢化社会に準じた金融サービスという意味では、ただ増やすことが目的の「しあわせ、ずっと」や「たのしみ、ずっと」よりは高齢者をメインターゲットとする銀行としてはニーズに適した商品と言えるでしょう。

 

デメリットとしては、まず為替レートによって超過した分については自分に戻ってくるというものですが、これは雑所得になります。銀行員の知識によって説明されていないなどということもあり得る部分ですが、この場合は確定申告が必要になりますので注意が必要です。

 

また、わざわざ敢えて外貨で運用する必要性があるのか、というところも問題です。現在の金融緩和により日本の円では金利はほとんどありません。保険各社も外債などを為替ヘッジすることで少しでも利回りを確保しようというご時世なので、顧客に提案する商品もほとんど外貨建てになるのですが、為替リスクを負ってまで微々たる利回りが欲しいのか、というところです。

 

3月17日現在の積立利率は、運用機関や残しておく保険金によって変わりますが、いずれを選択しても1%さえつかない状態です。長期運用であればあるほどリスクは大きくなりますし、両替手数料だって発生しています。ましてや中途解約は解約控除がもちろんかかります。リスクにあったリターンがあるのかは見極めなければいけません。

 

勿論円建てで運用することも可能ですが、銀行にバックされる手数料が著しく低下してしまうためわざわざ円建てを勧めてくる銀行員はいません。敢えて保険でなくとも贈与信託などの活用もあります。契約する際は、色々な贈与系商品を比較検討してから判断してください。

外貨建て保険『たのしみ、ずっと』

 

三井住友海上プライマリー生命が販売している外貨建て保険の一つであるたのしみ、ずっとに付いて解説していきます。

 

この外貨建て保険も銀行窓口販売商品でありますが、数多ある外貨建て保険の中でもとりわけ低質な商品として位置付けていいと思います。

 

外貨建て保険は性質としては保険というよりも外国債券に近い商品です。保証や安心は二の次で、高金利による運用を重視しています。但し多額の手数料や流動性を犠牲にしていますので、その差し引きで考える必要があります。

 

3月11日から24日までの積立利率を見てみます。

米ドルは2.7%。豪ドルは1.64%、ユーロは0.01%です。

たのしみ、ずっとの商品性は、この金利を年利で運用し、一年間で発生した利回りは全て円に両替して銀行口座に振り込むというものです。外貨建てでの元本は減らすことなく一定の利回りを10年間受け取り続けることができます。

 

勿論支払いは豪ドルベースですので、毎年の支払日に円に両替する際の為替レートは変わりますから毎年受け取る円換算額は変動します。毎年受け取れるのでたのしみ、ずっとという名前がついているわけですね。

 

高い金利を受け取る代わりに、流動性は大きく犠牲になります。途中で解約をしようとすると控除がかかります。初年度は10%と大きな控除がかかり、これが一年経つごとに1%ずつ減っていき、10年経った時点で解約控除は0%になるのです。つまり10年間は何かしかの控除がかかるということですね。

 

為替手数料は往復どの通貨も1円です。一般的な金融商品で比較すれば、為替手数料自体はそこまで大きなものではないです。

 

ただ、果たしてこの保険に加入するメリットはなんなのでしょうか。高金利で運用し、利回りは定期的に受け取りたいというのであれば、それこそ外国債券を購入すればいいだけではないでしょうか。

 

国債券も基本的な仕組みは同じです。外貨建てで金利を受け取り、償還時には預けたお金を返してもらうというところはまんまこの保険と同じです。為替手数料は証券会社によって違いますが、特に大きな差異はありません。

 

解約控除なんてシステムが入っていますが、これは実際にはコストです。5年後に解約しようと思えば、たのしみ、ずっとの場合は帰りの両替手数料プラス5%の控除がかかるのです。外債であれば帰りの手数料はありますがそれくらいです。この保険は余計に支払いコストが増えるのです。

 

そもそも外貨建て運用をするのであれば保険でなくてもいいわけで、この保険商品は10年後に受け取り続けるか保険金額を増やすかを選択できますが、果たしてそれがどれだけのメリットとなるのか考えなければいけません。

 

銀行がこの商品を売りつけるのは外国債券を販売できないからです。最近は銀行と証券会社で連携をするところも増えているので、敢えて外貨建て保険ではなく外国債券に誘導する営業もあります。

 

でも自分たちのところで完結させたい銀行は、金利が低いと不満を漏らす顧客に対してこういった商品を勧めてきます。果てして10年も固定されてしまうだけの不利益を上回る金融商品なのか、考えなければいけません。金利が固定されるということは、住宅ローンと同じですが金利が変わる時には不利に働くこともあります。この商品は一度買ってしまえばすぐには売れなくなります。このような条件を改めて考えてから加入するか検討するべきだと思います。

 

外貨建て保険『しあわせ、ずっと』

三井住友海上プライマリー生命が販売している銀行窓販向け外貨建て保険の代名詞的存在、それが「しあわせ、ずっと」という外貨建て保険です。

 

一体何がしあわせ、ずっとなのかは未だに解明できていません。この保険商品を契約して誰が幸せになるのかと問われれば、それは恐らく保険会社でしょう。

 

窓口となって販売している銀行もなかなかにして結構な手数料が入ってきます。投資信託は明確に手数料がいくらかかるのかを明示されているため、顧客としても自分がどれだけ手数料を支払っているのか分かるのですが、保険は現在手数料を明確にしるすことはしていません。

 

ですので、銀行や保険会社にどれだけの手数料が入るのか分からず契約させられます。ですがこれだけは覚えておいてください、投資信託の手数料なんて可愛いものだと思えるくらいの手数料が実際はバックされています。

 

それはさておき、この保険商品の解説に入ります。

 

 

円建終身移行特約付通貨選択利率更改型終身保険の一種です。

 

いきなり意味不明な漢字だけの羅列で驚かれるかもしれませんが、まさしく言葉通りなのです。

 

まず、この保険は外貨建てです。米ドルか豪ドルかユーロに両替し保険料を納めます。執筆時(3/11~24)の積立利率は米ドルが2.7%、豪ドルが1.92%、ユーロは0.01%となっています。

 

一昔前はオーストラリアの方が金利が高かったので豪ドル建が多かったですが、現在は米ドル建で契約する方がほとんどです。この商品は基本的にシンプルで、この利率が10年継続します。死亡保証金額は評価額とイコールです。

 

そしてこの商品には目標設定をする仕組みがあります。これが円建終身移行特約です。

大体のお客さんは最低の105%を目標にします。

 

これだけ見るとすぐにでも目標到達して終わってしまうのではないかと思われるかもしれませんが、実際はそうは問屋が卸しません。

 

解約控除と呼ばれるものがあります。目標にはこれが絡んできます。保険は満期前に解約すると解約控除がかかってしまうのは何もこれだけに限った話ではありませんが、この商品に関してはなかなかにきついのです。

 

一年目に解約しようとなると、10%の控除が引かれます。次の年には9%惹かれるようになります。その次は8%と、1%ずつ減っていく仕組みです。そこに目標の5%が上乗せされるのです。つまりもし初年度に目標達成しようとした場合、為替差益で15%の円安が必要となります。その翌年は14%、次の年は13%となっていくわけです。

 

大方5年くらいが経過すると、実質の目標額は10%になるので、積立利率が2%を超えていればちょうど為替が円高に振れていなければ達成することになります(但し往復の両替手数料は1円発生し、市場調整もかかるので注意)。

 

為替次第ですが、影響を受けなかったとして5年で目標達成したとしても、年利で言えば結局1%も付いていなかったということになります。何故ならば高い手数料が取られているからです。

 

それでいて保険と言いつつも、あくまで解約した時の外貨建ベースが解約金になるので安心感もなし。5年も置いておくなら明らかに投資信託の方が利回りも見込めるし流動性も高い。

 

要するに、流動性が低く、手数料が高く、資産増加は微々たるものなのです。外貨建ての運用をしたいのなら証券会社で外債を買うか外貨定期でもやっていた方がまだ良いでしょう。両替手数料や金利面ではそちらの方が上です。

 

銀行は投信か保険しか売れません。相場が悪い時は投信が売れないので、必然的に保険ばかり売るようになります。くれぐれも契約するかどうかは慎重に検討してください。なお、類似商品にしあわせの架け橋やグローイングライフといったものがありますが、いずれも中身は同じです。

『外貨建て保険』にご注意を!

皆さんはよく聞いたことがあるのではないでしょうか、ここ数年と銀行や証券会社が販売に力を入れている商品、その一つが外貨建て保険です。

 

通常、保険という商品は、万が一が発生した時のために備えておくもので、少ない元手でそれなりの保険金が支払われるというところが基本です。死亡保険、ガン医療保険などが当てはまります。

 

しかし、外貨建て保険というものはそういった類の保険とは全く異なります。まず元本保証はありません。よく保険各社のパンフレットには外貨での元本保証と苦し紛れに書かれています。あくまで保証されているのは外貨建てですので、海外で出金できるならまだしも、解約して最終的に円に両替しなければいけない場合はどうしても為替を気にする必要があります。

 

当たり前ですが為替相場が契約時よりも円高に推移していれば為替差損が発生しますので円ベースでは損失となります。外貨建てで保証されてはいますが、円保証がされている保険は少ないです。

 

保険と謳ってはいますが、要するに外債を保険にパッケージしたものです。終身保険の場合は契約者を被相続人、保険金受取人を相続人に指定することで相続税控除の対象にすることもできます(相続税法第12条参考)が、ぶっちゃけメリットはそれくらいです。

 

手数料も安くはありません。いずれの外貨建て保険にも存在するのは為替手数料です。基本的にこの手の類の保険商品の対象通貨は米ドル、豪ドル、ニュージーランドドル、ユーロあたりです。ユーロは現在ほとんど金利がつかないので契約する意味を持っていません。

 

いずれの通貨も基本的には片道50銭です。解約時にもこれはかかるので実質1円の手数料が発生します。また、これは種類にもよるのですが契約時にまとめて手数料を先払いで頂戴する保険と、販売手数料はない代わりに解約控除が大きい保険があります。どちらもどちらがいいと言えるものではなく、どちらも無視できない手数料率です。

 

全ての外貨建て保険がこの手数料というわけではありませんが、とりわけ銀行などで扱っている保険はどれも目一杯の手数料を徴収していきます。それはそうですね、自分のところにたくさん手数料が入ってくるから保険なんて売っているのですから。そうでなければどこもわざわざ保険商品なんて売りません。

 

このブログでは個別の保険商品を取り上げて良いところ、悪いところを見ていきたいと思います。

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この度は当ブログ「LOP REX」への御訪問、誠に有難う御座います。

 

当ブログの管理人を務めさせていただきますElsyuと申します。

 

地方銀行及び地方証券での就業経験から、日本人の経済観や金融リテラシーの低さに不安を抱きまして、お金に対する考え方や経済合理性、投資の考え方などを可能な限りわかりやすく伝えていければと思います。

 

また、個人的にはミニマリズムを推奨しておりまして、『保有するモノは極力少なく、ただ保有するモノ自体は高品位なものを』をモットーにminimal luxuryの考え方を広める活動も合わせて行っていければと思います。