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地方銀行と証券会社で働く筆者のお金にまつわることを発信するブログです。

外貨建て債券に御用心。

外貨建て債券を知っているでしょうか。対面証券でもネット証券でも取り扱っていますが、一般的にはあまり表立って売買される商品ではないので知らない方も多いかと思います。

 

外貨建て債券はいわゆる外国債券ですが、色々な商品が存在します。

 

まず、発行元は外国の大手金融機関や国際金融機関が多いです。例を書きますと世界銀行、国際金融公社、ノルウェー地方金融公社、スェーデン輸出信用銀行などなど多彩です。

 

発行元は基本的にS&Pムーディーズなどの大手格付け機関にてダブルA以上の高格付けをされているところに限定されます。債券運用の最大のリスクは発行元の債務不履行リスクなので、このあたりを極力抑えているわけです。世界銀行や国際金融公社は国連所属の金融機関で、新興国に融資をして経済発展を支援する存在であり、多くの国が加盟している最も大きな銀行です。

 

世界銀行の発行する債券はサステナブル・ディベロップメント・ボンドと言われ、とりわけ新興国発展途上国に存在する社会問題、環境問題などを解決する支援の融資を行うために資金を工面するために債券を発行しており、いわゆる社会貢献できる債券です。5月にはフコク生命が60億円相当のクローネ建で世界銀行の債券を購入したニュースがありました。

 

そういう意味では、投資信託や株式とは商品の方向性は違うものなのだとご理解いただけると思います。ただ、これはあくまで世界銀行系の話であり、前述した通り普通の金融債も存在します。

 

一見してみると良い商品に思えます。特に新興国通貨建てがよく取引に使用されます。インドやインドネシア、メキシコやトルコなどは高金利で有名ですが、こういった通貨に両替し、その通貨で買い付けることで通貨の金利をプラスできるのですね。

 

そうすると、この商品群は年間の名目金利は5%前後の高金利債券に変わります。新たに発行される新発債券もありますが、基本的には証券会社が在庫を持つ既発債券の販売が主です。

 

日本は絶賛低金利を爆走中で、この終わりはいまだに見えません。今後のしばらくは低金利が続くわけですから、5%の利回りというのは非常に良く見えます。しかし、だから良い商品かという問いには疑問を投げかけざるを得ません。

 

自社の条件を書いてしまうと怖いのでわかりやく現在某ネット証券で販売されている外貨建て証券で見ていきましょう。

 

ノルウェー地方金融公社インドルピー建債券」

「残期間2年4ヶ月」

「買い付け単価96.50ルピー」

「表面金利4.93%(税引き前、年率)参考利回り、6.56%(税引き前、年率)」

 

債券には価格があります。日本の国債社債も同じで、発行時は額面は100で発行され、償還時にも100で償還されます。この間価格は変動しており、販売価格が100より低い場合をアンダーパー、高い場合をオーバーパーと言います。安い値段で買うと、償還時に100に増えて戻ってくるのでその分がプラスされます。逆も同じパターンで割高となります。

 

参考利回りが6.56%ですが、税金を考慮すると実質の年率は5.22%となります。簡潔に計算してしまいますが、2年4ヶ月で計算すると利回りでの利益はおよそ12%程度といったところでしょう。インドルピーの為替手数料はこの証券会社では為替レートに5銭加えて両替するそうです。ちなみに勤めている証券会社よりはちょっと低いです。

 

5銭と聞くとそんなものかと思いがちですが、インドルピーと円のクロスレートで計算すると手数料は約3.3%かかることになります。つまり、実質の利回りは12−3=9%という感じになります。

 

2年4ヶ月で9%なら悪くないではないか、勿論それに関してはイエスですが、問題はここに為替リスクが発生するということです。外貨建てにしているので当然ですが為替が円安の時に両替すればさらなる利益を生みますが、円高の時に両替してしまえば利益は削られてしまいます。

 

為替の世界では一般論ですが、経済学的にはインフレの国の通貨は下落します。これはインフレに起因する通貨の価値が目減りしていくためです。外国為替というものは、あくまで2国間の通貨の不公平を調整するために存在するので均等になるようにレートが変わるのです。

 

つまり、日本よりもインフレになっている新興国の通貨は安くなりやすい、つまり円高に推移しやすいのです。これは為替チャートでルピーやルピア、リラやランドなど見ていただければ明らかです。となれば、9%の為替レートがマイナスになることも十分に考えられるのです。

 

勿論タイミングの問題もあるので必ずしも損するとは言えません。ただ確率的には損するリスクが高いということです。外貨建ての商品はその利回りだけを重視して良い商品に見せていますが、とりわけ日本よりもインフレの国の通貨に両替する場合、金利のメリットは為替レートで相殺されやすいことを念頭においてください。投資先がインフレを上回って価値が上昇するなら別ですが、債券ではその期待は難しいでしょう。

 

インフレを上回って利益を期待できるのは株式くらいなものです。外貨建て債券を検討する場合はそういったところもよく考えていただければと思います。

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