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地方銀行と証券会社で働く筆者のお金にまつわることを発信するブログです。

海外の金利で資産を増やしましょうという金融商品にはご注意を!

当ブログでは、海外の金利で資産を増やしましょうという煽り文句の金融商品や勧誘行為に関して注意喚起をしています。

 

銀行で言えば外貨建て保険ですし、証券会社で言えば外貨建て債券です。これらの商品には本質的に商品として問題があるものがあるので、その辺りで失敗しないための方法の一つをご案内します。

 

インフレ率、という言葉をご存知でしょうか。簡単に説明すると、去年よりもどれだけ物価が上がったかをパーセントで表す指数です。

 

外国為替レート、という言葉をご存知でしょうか。二国間の通貨を交換する際の交換レートのことを差します。外国為替系の金融商品を購入する際にはこれらを理解しなければいけません。表面に書かれている金利だけで良し悪しを判断してはいけません。

 

まず結論から書きますが、「インフレ率の低い国の通貨は上昇する」です。

 

ここで思考実験です。とあるメーカーの車が、日本では100万円で販売されていたとします。ここで日本のインフレ率は0%ということにします。ちなみに最近の日本は約1%です。ここでは話をわかりやすくするためにこう定義します。

 

そして、同じ車をアメリカでも1万ドルで販売します。ちなみにインドのインフレ率は5%とします。これは30年前のアメリカのインフレ率で、今は2%前後です。

 

ちなみに当時の為替レートは1ドル=100円です。また日本とアメリカのインフレ率は5年間変わらないものとします。

 

インフレ率は、去年よりも物価がどれだけ上がったかということなので、日本の車は5年後経ってもインフレ率がかわらないので100万円になります。

 

そしてアメリカでは最初は同じで販売されていた車が、毎年5%のインフレ率を保った場合約130万円になってくる訳です。5年前は100万円で買えていた商品が130万円、物凄い値上がりですね。

 

こうなると、車のメーカーとしては、日本で製造してアメリカで販売した方が利益が多くなる訳です。簡単に儲かりますね、いいビジネスです。しかし、そうは問屋が卸しません。これは圧倒的に不公平な状態です。この不均衡な状態を調整するのが外国為替です。

 

ちなみに、このままでは不平等なのでどうするのか。答えは単純に、為替レートで相殺するのです。つまり1ドル=77円にすれば均衡することになる訳です。

 

これは言い換えればインフレ率の高い国の通貨は下落する、ということです。先ほどと同じ意味ですね、すみません。しかし大事なことなので二回書きました。

 

インドやトルコ、ブラジル、インドネシアなどの新興国の通貨は金利が高いです。インフレ率が高いので当然と言えば当然です。金融機関の営業員は次のような言い方で営業をします。「日本円では金利が低いので、金利の高い国の通貨で運用して高金利を享受しましょう」と。

 

上記の市場調整機能(裁定と言います)はすぐには発生しません。長い時間の中でゆっくり調整されていきます。3年くらいであれば、購入のタイミングにもよりますが高金利のメリットを享受できないとも限りません。しかし残念ながらここにも罠が。手数料を忘れてはいけません。新興国通貨の為替手数料は結構エグいものです。平気で3%後半の手数料を為替レートに上乗せしてきます。

 

そうなると、思ったほどの利益は取れない可能性が高いのです。表面的には5%近い金利の債券が多く出回っているインド債券も、最終的に満期償還されて円に戻ってきたときに果たしてどれだけ利益が出ているでしょうか、残念ながらそこまで期待したものではないどころか、タイミングによっては損失を被っている可能性も普通にあります

ecodb.net

*世界経済のネタ帳様より

為替レートを見ていただければ、長期的には円高ルピー安になっているのがお分かりかと思います。これを見て今が下限だ!と思えるでしょうか。そうではありません。インドが日本よりもインフレ率が高い限りルピーは円に対して下がり続けます。

 

ちなみに経済知識に乏しい銀行営業マンではここまでそもそも考えない人もいますが、証券会社の人間は大方理解しています。理解した上で販売されるので悪質ですが、債券は顧客の資金が長期固定化されやすいので好んで提案はあまりされない傾向にはあります。

 

いずれにせよ、外貨で高金利を目当てに金融商品を買い付ける場合は、この日本と相手国のインフレ率の違いを意識してみてください。短中期であれば、利益を出せる可能性は未だあります。2016年の夏頃に買い付け、2018年の夏頃に償還すれば利益を出して追われるでしょう。しかしそれ以外のタイミングではあまり利益が取れないどころか為替差損でマイナスになる可能性もある訳です。

 

表面的な金利の高さに惑わされず、しっかりとした知識をおつけになって金融商品を購入するようにしてください。

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