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地方銀行と証券会社で働く筆者のお金にまつわることを発信するブログです。

最近の郵便局やゆうちょ銀行の問題について

ここ最近何かと不祥事というか最早詐欺的な不適切販売が露呈して世間を騒がせているゆうちょや郵便局の投信や保険の不適切販売についてですが、正直なところこういったことは何もこの会社だけの問題ではありません。

 

今現在、金融機関は非常に厳しい状況に陥っています。これは郵便局以外のほとんど全ての営利目的で活動する金融機関に言えることです。特に地方銀行は既に至る所で終わりのカウントダウンが始まっている状態であり、収益確保は既に困難な状態です。

 

地方銀行はその名の通り地方を基盤として、その地域の企業や個人に金融サービスを提供し、その手数料で稼ぐビジネスですが、現在多くの地方では人口減少に歯止めがかからない状態です。経済についても政府は戦後最長の好景気だとか言っていますが、地方市民や企業の景況感はあまり改善されてはいません。

 

先行きに不透明感が強ければ、企業は積極的な設備投資ができません。内部留保の拡大がたまにとりだたされますが、ここしばらくの企業の多くは今後来るであろう不況に備えて資金を溜め込んでいるのです。

 

銀行は融資をして利息で稼ぐビジネスなので、まずこの基本的なビジネスモデルで稼げていないのです。ましてや空前の低金利とされるこの現在においてもそんな状態であるということが、今の景況感がどれだけ悪いかわかると思います。

 

そうなると、銀行は本業で稼げないわけですから、それ以外の手数料ビジネスで稼ぐしかありません。その大きな柱が預かり資産収益というものになるのですね。

 

預かり資産というのは投信や保険などの金融商品のことで、これらを販売する手数料が現在の金融機関の収益を支えているのです。とはいえ、若者はネット世代ですので、ネット銀行やネット証券がメインになってるわけで、そうなるとこういった商品を販売する相手は高齢者になってくるわけです。

 

銀行で販売する投資信託は、はっきり言って銀行や運用会社に都合の良い商品がほとんどです。今や販売手数料無料が当たり前になりつつあるネット証券がある御時世に、平気で2~3%の手数料を徴収します。更に年間間接的に差し引かれる信託報酬も1.8%くらいとります。

 

ある程度の知識ある人であれば明らかに手を出さないであろうコストですが、これがこと高齢者の方はそこまでの知識を有していない方がほとんどなので、それが普通なのだと思ってしまうのですね。

 

同じような商品はネット証券でも手数料無しで買えますし、売り買いの手続きも簡単です。銀行で対面売買する場合はタブレットか書面で買付や解約の申込書を書かなければいけません。

 

保険も同じことですが、表に出ていない手数料はかなりのパーセントを占めています。今は円建て運用ではほとんどメリットを提示できない状態なのでほとんどが外貨建てになっています。こうなると為替リスクがあるわけですからいくら表面上の金利が高かろうと為替差損を被る可能性はあるわけです。相対的購買力平価説を持ち出せば、海外の高金利は長期的には為替で相殺されるのがオチなので、こういった商品自体が果たして有用なのか疑問です。

 

最大の問題は、銀行の従業員は投資や資産運用に関する知識をあまり持っていないということです。勿論中にはしっかり勉強して営業している人もいますが、結構な割合で普通の営業員には大した知識はありません。これは窓口の人間だけでなく、商品を販売する人間も同じです。試しに市況の話や購買力平価の話題を振ってみると良いです。なんとなくでしか答えられない人が多いですよ。クロスレートの意味も知らない人が居ますし。

 

よくわからない人間が、よくわからない商品を、よくわからない人に販売し、結果よくわかってなかったけど損失が出たと苦情になるわけです。高齢者の方には、契約当時は意識がしっかりしていても後々痴呆やボケてしまう方もいるわけで、そうなってしまっては本人に言った言わないを話しても意味がありません。それを防ぐために若い家族に同席してもらったり確認してもらったりする必要があるわけです。でも、大体馬鹿正直に商品の話をすれば家族には嫌がられたり断られたりすることも多いので、ノルマ達成のために数字が欲しい営業員はその手続きをないがしろにしてしまい、結果今回のような不適切販売につながるというわけです。

 

ただ、地方銀行の主要な顧客は高齢者です。若者はあまりお金を持っていないですから。溜め込んでいる高齢者の預金にターゲットにするのはごく自然な流れでしょう。そして不祥事を犯す。抜本的な経営方針や収益確保の戦略を見直さない限り、こういった不祥事は続くと思います。ただその時間がないのが地方の金融機関ということです。

 

銀行員に金融商品を案内された場合、それがどういう商品なのか、よく考えてから買付の判断をするようにしてください。